日常グルーヴ

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「北斎とジャポニスム展」で北斎の漫画力に平伏した件

文化の日で混みそうだな~と思いつつ、上野の西洋美術館で開催中の「北斎とジャポニスム展」を観に出かけた。

 

hokusai-japonisme.jp

 

これは先月、同じ上野で開催中の「怖い絵展」のチケットを購入した際、どうせ観に行くのならと同時に買っておいたチケットなのであった。

 しかし、この日とんでもなく混んでいたのは「怖い絵展」の方で、いまや平日でも1時間半待ち、土日は2時間以上だとかで人気はまだまだ継続中らしい。

「怖い絵展」は私も平日に観に行ったものだが、その時は20分待ちくらいだったからラッキーだったようだ。

「怖い絵展」の鑑賞記はこちらに書いたので、興味のある方はご覧いただきたい。

 

 

www.monarika.com

 

私が上野に着いたのは午後三時頃。

美術館前はそれほど混雑している様子は無かった。

チケットはあるので、すぐに入場できた。

今度も音声ガイドを借りた。声の案内は松重豊氏が務めていた。

 

どの美術展でもそうだが、入口付近フロアが一番混む。

今回まずはガラス越しに鑑賞する小さな作品がくるので、覗き込むように観なければならないのだが、一列目に立たない限りいまいち見えない。

日本人特有の規則正しさが発動されて、まるで一つの作品を1人づつ鑑賞するかのような縦長の行列ができあがっていた。館内の警備員はしきりに、「並んで順番にみることにはなってないから、もっとラフラフな感じで要領よく観てね!」と(いうような)注意をさかんに喚起していたが、行列なんてなんのその!の日本人らは聴く耳をもたず、黙々と自分の番がくるのを待っていたようだ。

私も始めはそこに並んでいたが、時間がもったいなくて、その辺りは遠めにちょっとだけ観てから足と首のフットワークを活かし、次々と作品を鑑賞していくことにした。

 

浮世絵が西洋に見いだされた19世紀後半に、欧米でジャポニスムが流行ったことは知っていたが、西洋が影響を受けたと云われる絵画や美術品が、葛飾北斎だけでこれほどの量が集められたことに驚く。

ここ何年か「日本スゴイ!」系のTV番組に辟易しているところだったが、この展覧会においては、ただただ「北斎すげえ!」と、その才能に脱帽するしかないのであった。

例えば北斎の描く生き生きとした人物描写を見ていると、日本に漫画が花開いた理由がわかる気がしないだろうか。

冨嶽三十六景の景色よりも、その周辺に見られる人物の様子がユニークで、とことん漫画的な要素が感じられてしかたがない。

私の好きなこの「冨嶽三十六景」の中の「駿州江尻」などは、突風にさらされる人々の一瞬の描写が現代にも通じる漫画表現と変わりないではないか。

 

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 ほらほら、飛ばされる紙の流れるような描き方の見事さよ。

富士山を簡略化してしまった大胆さにも度肝を抜かれる。

 

展覧会の趣旨通りに、影響を受けたとされるモネ、ドガ、セザンヌ、ピサロ、ゴッホ等々の絵画が展示されているわけだが、「これ本当に影響受けてる?」的な作品もあったりする。

メアリー・カサットの「青いひじ掛け椅子に座る少女」には、北斎漫画の中のこの絵から影響を受けているという。

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布袋様かな?

これがカサットが描くとこうなる↓

 

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なんて愛らしい少女!(ちなみにこのポストカード買った)

当時の絵画シーンで、少女というものは大体がお行儀のいいポーズが多かったそうで、この絵のような、退屈した子供らしい、ありのままの姿をとらえたものは、確かに北斎っぽいかもしれない。現にカサットは日本画からの影響を受けた作品を残している。

 

逆にエミール・ガレの鯉の鉢の絵や、スーラの岬の絵はモロパクリ(だからオマージュとリスペクトということ)で、わかりやすく微笑ましい。

ドガの踊り子は北斎漫画の中の相撲取りのポーズからというのには「うまくやったね、ドガ」と納得できる参考の仕方だ。

またまたルドンの最近本で観たばかりの「聖アントワーヌの誘惑」の中の一枚が、北斎の「百物語 さらやしき」から影響を受けているとのことで、意外だったが嬉しかった。

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こちらが北斎の「さらやしき」。

「さぁて、今夜は何しようかなぁ~」とか考えてそうな幽霊。

おとぼけ気味で全然怖くない。

 

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どうでしょう、長い胴体(?)の上に顔という点では同じような、よくわからない生き物の図。瞳が妙に色っぽい。

 

風景絵画ではモネもセザンヌも北斎からインスパイアされているが、浮世絵の何が素晴らしいって、私はその構図の大胆さに魅了される。

西洋絵画にはありえないような、手前にドーンと木であったり崖であったり、高波越しの遠景など、今も写真を撮る時に意識してしまうような構図の宝庫だ。

 

日本から生まれた美術が、これほど世界に認められていたことを知る機会を、今回の展覧会は改めて私たちに知らしめてくれた。

巷の日本礼賛は食傷気味だが、芸術分野ではもっと知りたいと思ってしまうのは我がままだろうか?

そういえば、上野ではゴッホの日本趣味展覧会も開催中だ。

 

gogh-japan.jp

 

こちらも観ておいて絶対損はないだろう。